先週のお題「人生で一番高い買い物」
以前から、私が「持っている」と高らかに宣言している、GIA・GGの資格。
マイナーな資格ですが、ジュエリーが好き、宝石が好き、鉱物が好き、という方はご存知かもしれません。
アメリカに本社を置くGIAは、世界的な「宝石学の研究機関」です。
その研究機関が教育の一環として行っているのが、GGの教育プログラム。
今回は、このGIA・GGという資格について、詳しく紹介したいと思います。
そして、タイトルにもあるように。
このGIA・GGこそが、私の人生で最も高額な買い物。
このコーナーで紹介した「真珠検定」や「ジュエリーコーディネーター検定」の比ではありません。
二桁は、違います。
しかも、これからGGを目指そうという人は、おそらく私が取得した時よりも、更にお金がかかるはずです。
では、そんなGGについて、じっくりと見ていきましょう。
- GIAとはアメリカの民間鑑別・鑑定機関
- GIA・GG取得にかかる金額はおおよそ〇〇〇万円!
- 資格取得までの大まかな流れ(日本校・通学)
- 資格取得後にGIA・GGを名乗るのは責任重大
- 取得しても有利じゃない?資格を持つ本当の意味とは
- 【基本データ】
GIAとはアメリカの民間鑑別・鑑定機関
GIAとは、Gemological Institute of Americaの略です。
日本語では、米国宝石学会と訳されることが多いですね。
ただし、日本語でも正式には「GIA」と表記します。
アメリカのカリフォルニア州カールスバッドに本校があり、他にもアメリカ国内やヨーロッパ、インド、東南アジアなどに教育部分校がある大きな組織です。
かつては日本にも、教育部の分校がありましたが、今はもうありません。
現在日本にあるGIAの事務局は、ラボ(鑑別・鑑定を行う会社)のみ。
残念ながら教育部の事務所ではありませんので、日本国内でGGを取得することは出来ません。
そんなGIAが行う教育プログラムを卒業すると、GGという称号を頂けます。
GGとは、GRADUATE GEMOLOGIST®の略で、日本語にすると「宝石学修了者」です。
diploma(ディプロマ)なので、日本でいうところの、2年or3年制の専門学校卒業者に与えられる「専門士」の資格に近いですね。
このGGを取得できれば、世界中でGIA・GGを名乗ることが出来ます。
つまり、世界で通用する資格なんですよ。
ちなみに、GIA・GGと肩を並べる資格が、イギリスにもあります。
それは「FGA」、イギリスの宝石学協会が行っているものです。
正式には、The Gemmological Association of Great Britain(英国宝石学協会特別会員)と言います。
FGAはGIAと比べると、もっと「学術的」な宝石学を勉強する、というイメージです。
GIA=ダイヤモンドのグレーディング重視
FGA=宝石全般の鑑別重視
といった印象?
FGAは持っていないので、あくまでも「私の感覚」なのですが。
GIA・GG取得にかかる金額はおおよそ〇〇〇万円!
では、GIA・GGについて詳しく見ていきましょう。
現在(2022年6月)、日本国内でGIA・GGを目指すのは、とてもハードルが高いです。
その理由は、お金の問題と地理的問題。
実は、GIA・GGを取得するには、(あなたの居住地や使える言語にもよりますが)全部合わせると、どんなに安く見積もっても300万円以上かかります。
これは、学費に加えて、実技講座を受けるための海外渡航費&滞在費が必要だから。
先程紹介した通り、現在日本国内には、GIAの教育部はありません。
そのため、資格取得のためには海外に行く必要があります。
今現在、日本から一番近いのは「台北」にある教育部です。
では仮に、その台北でGGを取得する場合の金額を見て見ましょう。
台北でGGを取得するために必要な学費は、NT$570,500.00(台湾ドル)です。
これを日本円にすると、約260万円。
更に台北への渡航費、現地滞在費(生活費も)が必要です。
更に更に、授業は現地の言葉で行われるため、台北で取得するためには「専門的な学校に通えるくらいの中国語力」が必須。
語学に自信がなければ、語学の勉強から始めなくてはいけません。
中国語は無理だけど、英語ならOKという方は、カリフォルニアの本校で学べます。
その場合、学費は$24,101.78。
2022年6月の計算だと、何と学費のみで320万円を超えます。
もちろんここに、渡航費と現地滞在費がかかります。
上記は、あくまでも全日制の通学プランの場合。
長期間の海外滞在が不可の場合は、通信教育での受講も可能です。
ただし、実技は必ず実際の学校に通う必要がありますので、何度かは必ず海外へ出向かなくてはいけません。
GIA・GGが金額的、地理的にハードルが高い資格であることが、お判りいただけましたでしょうか。
日本で取得できたのは2015年まで
GIAの日本校が閉鎖されたのは、2015年。
それまでは、東京・大阪の二か所で取得が可能でした。
もちろん、テキストは日本語ですし、授業も日本語。
たとえ遠方にお住まいでも、通信教育を利用すればいいし、実技も東京か大阪で受けられました。
何と恵まれた環境だったことか。
ちなみに、私が卒業までに必要だった金額は、日本での学費のみで、大体約250万円くらい。
在学期間は半年間でした。
ちなみにこの費用は、入学料、授業料、テキスト代、鑑別・鑑定用の機材費などが含まれています。
この金額でも、「通常の私立大学に通うより高いんじゃない?」というのが、当時の感想でした。
それでも、今のように海外に行く必要もなければ、語学力もそこまで必要とされていなかった。
GIA・GGは確かに人生で一番高い買い物でしたが、私は随分とお得に手に入れた方なのでしょう。
資格取得までの大まかな流れ(日本校・通学)
私はあくまでも日本校に通っていたので、現在各国で行われている内容とは、資格取得までの流れも変わっているかもしれません。
なのでここで説明する資格取得までの流れは、あくまでもかつて日本校で行われていたものです。
参考程度に考えてください。
私が通ったのは、日本校の全日制通学コース(半年間/月~金/朝から夕方まで)。
このコースでのGG取得までの流れを、見ていきましょう。
GIA・GGの講座は、いくつかのコースに分かれています。
まず大まかに、ダイヤモンドコースとカラーストーンコース。
更にそれぞれが、エッセンシャルコースと本コースに分かれています。
当時の日本校での授業は、
1・ダイヤモンドエッセンシャルコース(座学)
2・ダイヤモンド本͡コース(座学)
3・ダイヤモンドグレーディング実習(実技)
〈ダイヤモンドコース試験〉
ここまでで、約1か月くらいかかります。
ダイヤモンド͡コース終了時に、座学のテストとグレーディング実技テストがあり、合格者が次のカラーストーンコースに進むことが出来ます。
4・カラーストーンエッセンシャルコース(座学)
5・カラーストーン本͡コース(座学)
6・鑑別実習(実技)
(もしかすると、エッセンシャルコース(1と4)を先に行い、その後本コースに入る、という流れだったかもしれません。ちょっと記憶があやふやです)
ダイヤモンドコース・カラーストーンコース共に、座学のコース内では、習熟度テストのようなものが何度も行われていました。
また実技は座学と同時進行だったので、「午前中に座学、午後から実習」という流れが毎日続きます。
これが約半年間続き、最終的テストが待っています。
〈鑑別実技試験〉
朝一番に、一人20石の正体不明の宝石セットを渡されます。
その全ての宝石の鑑別を行い、結果を提出。
全問正解(鑑別過程も含め)で合格、はれてGIA・GG取得です。
最終試験は、1つたりとも間違えてはいけません。
先生の所に自分の回答を持って行ったとき、どれだけ緊張したことか。
私は、一度目に1石だけ間違えて、二回目で合格しました。
確か、ムーンストーンの色?を書き忘れたと記憶しています。
え?それだけで?みたいな間違いも、許されませんでした。
資格取得後にGIA・GGを名乗るのは責任重大
こんな風に、座学と実技をみっちり半年こなして、最後に重箱の隅々までつつかれる試験を受け、ようやく受講者はGGを取得できます。
正直、かなりハードな半年でした。
特に私のように、予備知識ナシで受講したら、毎日新しいことを覚えないといけないので大変。
しかも、理系な勉強を避けて通って生きてきたのに、ここにきて一日中理系のお話ばかり。
それでも、半年真面目に授業を受けていれば、何とか試験に合格出来て、今では名刺にも堂々と「GIA・GG」と書いています。
だから、資格試験として受講のハードルは高くても、まじめに勉強すれば取得はできます。
ただし一つだけ注意。
GGを取得したら、その瞬間からあなたは「宝石の鑑別が出来る/ダイヤモンドのグレーディングが出来る」人だと見られます。
そして、私たちが扱う品物はとても高額ですので、鑑別・鑑定を間違うことは許されません。
勤めている場合は、会社の信用にも関わります。
「宝石鑑定士を名乗れる=周りからそういう目で見られる」ことを、くれぐれも忘れないでください。
取得しても有利じゃない?資格を持つ本当の意味とは
あ、でもね。
GIA・GGを取ったからと言って、就職があるわけでも、給料が上がるわけでもありませんよ。
GGを取得したらその瞬間から宝石鑑定士だと判断される、とは言いましたが、正直資格取得しただけの業界素人は何の役にも立ちません。
私が鑑定・鑑別会社に勤めた時も、面接で「GG持ってます」と言っても、「まあ、別に持ってなくてもいいよ」と返されただけでした。
そして今現在、GIA・GG持ってるからって、個人経営の宝石商が不景気なことに変わりはありません。
でも、資格なんて本来そう言うものです。
持っていることに意味があるんじゃなくて、取得するまでの過程を経験したことに意味がある。
資格なんて紙切れ1つです。そんなものは、なくても良い。
ただ、GIA・GGになるために学んだ知識、責任もってGIA・GGであると名乗ること、その意味が一番重要なんですよ。
人生一番の高い買い物で、私は世界で通用する資格と、その責任を購入しました。
【基本データ】
GIA・GG
試験費用:300万円以上
試験場所:アメリカ、東南アジア、インド、ヨーロッパなど
難易度:勉強の方はそこまで難しくはない/お金と時間の面では、難易度がとても高い
採集試験形式:鑑別実技試験
合格ライン:100%のみ合格