何の台座にも止められておらず、単体のままの宝石のことを、ルースと呼びます。
ちなみに日本語では「裸石」。
「はだかいし」と読みます。
「らせき」じゃないです。
そんなルースの撮影は、ジュエリー好きだけでなく鉱物ファンの方も撮影しますよね。
自分のコレクションを、より美しい姿で写真に残す。
準鉱物マニア(コレクターという程のコレクションもないので)な私も、時々ルースだけで写真を撮ったり、動画を撮影したりします。
特に、商品管理の際は、鑑別・鑑定書に載っているようなルースの「証明写真」を撮影しておくことは重要。
どんなルースなのか、写真を見れば一目瞭然ですから。
今回は、誰もがよく目にする宝石であり、私が最も沢山撮影した「ダイヤモンド」の撮影について、考えていきます。
ダイヤモンドの「証明写真」とはこんな写真です
この写真は、かなりうまく撮影できたので、密かなお気に入り写真です。
宝石の鑑定書や鑑別書をみたことがある人なら、こんな写真が付いているのを目にしていることでしょう。
こういった正面からのダイヤモンド写真は、ネットの宝石屋さんの商品紹介の写真でもよく目にします。
何だか、履歴書に貼る証明写真の様ですよね。
実際、この写真はダイヤモンドの証明写真です。
ピントを上手に合わせられたなら、ダイヤモンド内部の特徴(インクルージョン)まで映ります。
インクルージョンとは、ダイヤモンドの内部特徴、分かりやすく言えばダイヤモンドの中に見える「キズ」のようなものです。
インクルージョンが完全に一致するダイヤモンドは、この世に二つとありません。
その為、写真にインクルージョンが映っていれば、どのダイヤモンドの写真なのかが分かるんです。
勿論、写真にはそれ以外の情報も映っています。
そんな様々な情報が映るダイヤモンドの証明写真の撮り方について、見ていきましょう。
撮影背景は鏡もしくは光沢のない白地
ダイヤモンドに限らず、ルースの証明写真を撮影する場合、背景は鏡か光沢のない白地を選びます。
何故なら、宝石にはそれぞれ色があるから。
宝石の色合いを、出来るだけホンモノに近い色で撮影するには、白地の上が最適です。
宝石の輝きは、周囲の色の影響を受けやすい性質があります。
キラキラするというのは、つまり「反射」しているということ。
反射しているのは、周囲の色、光です。
だから、黄色い色の中で撮影したダイヤモンドは、黄色く映ります。
真っ白のダイヤモンドも、黄色っぽく映ります。
これでは証明写真になりませんよね。
だからこそ、出来る限り色の影響がない白地を選択します。
鏡の上で撮影する場合も、基本的に背景が白になるように調整しています。
鏡の上で撮影する手順
鏡の上に置いて撮影したダイヤモンドの写真は、ネットでもよく見る撮影方法です。
では具体的に撮影の手順を確認しましょう。
1・いつもの道具を配置する
白箱に、大きめの鏡を敷きます。
この時に、出来るだけゴミやホコリ、指紋や汚れを取り除きます。
2・被写体の周囲を鏡で覆う
白背景となるように、白箱が鏡に映る場所に被写体をセットします。
そして、更に周囲を鏡で覆います。
光を多方向より当ててあげると、キラキラしたダイヤモンド写真が撮影できます。
この時、一枚は必ず自分の手で動かせる鏡を用意すること。
上の写真だと、右の手鏡が使いやすいです。
3・撮影
ちょっとずつ角度を変え、ピントを合わせ、何枚も何枚も撮ります。
その時に、手鏡も少しずつ動かします。
ほんの数ミリ鏡を動かすだけ、ほんの少し傾きを変えるだけで、全く違う写真になるんです。
他にも鏡の数を変えたり、卓上ライトの角度を変えたり、あの手この手で撮影。
注意したいのは、デジカメ撮影の場合、ファインダーを覗いていないことが多い、ということです。
つまり、実際にどんな写真が撮れているのか、私の目では確認できていないんです。
デジカメの画面を見ているから同じだと思うでしょう?
実際には全然違う写真が撮れたりします。
背景が白くない、鏡に卓上ライトや天井が映ってる、なんてミスもしょっちゅうあります。
だからこそ猶更、もう嫌になるほど撮影。
大体、一つのダイヤモンドで70~80枚撮影します。
恐ろしいことに、そのほとんどが没写真です。
(私の撮影技術がないから沢山撮らないといけない、という理由もあるけれど)
4・最後は撮影した写真を軽く加工して完成。
詳細は、過去記事を参照してください。
白背景なら周囲の色を映り込ませるのもあり?
鏡の上で撮影する時は、徹底して白箱と鏡で周囲を囲いました。
これは、説明した通り、ダイヤモンドに余計な色を映さない為、また鏡に余計なものを映さないようにするためです。
何も考えずに鏡の上で撮影すると、こうなります。
ですが、背景をはじめから白地にしてしまうなら、こんな映り込みはありません。
だったら、堂々と囲わずに撮影してみよう!
少し周りのごちゃごちゃ感も映りました。
でも、これはこれでダイヤモンドのキラキラを演出できた気がする。
証明写真らしくでも美しく
今回は、いわゆる商品管理用のダイヤモンド写真の撮影方法を見てきました。
- 基本的に実物の色を再現できるよう、白背景で撮影する。
- ダイヤモンドのキラキラ=反射であることを忘れない。
- 鏡で囲み、角度を変えて撮影するといろんなキラキラ写真が撮れる。
- でも意外とキラキラしないし、ピントが合わない。
- だからこそ、撮影角度や鏡の角度、照明の角度を変えて撮りまくる。
- 撮って、撮って、撮りまくる。そして、そのほとんどがボツになる。
- 白背景にするなら、周囲を囲わずにわざと周囲の色や光を映り込ませるのもあり?
背景に色を付けたり、小物を使ったり、角度を付けて恰好よく仕上げる写真と違い、ルース正面から撮影する「証明写真」はごまかしがききません。
如何にホンモノがそこにあるように撮影できるか、それが難しい。
何十枚も撮影して、結局全部没になることもあります。
時間がなくて数枚しか撮影しなかったのに、びっくりする程綺麗に撮れることもあります。
何とか撮影方法は確立しましたが、もっと沢山撮影する必要がありそうです。
まだまだ、修行の最中。