GIA・GGの資格を取得し、早………何年?
多分、17、8年だったと思います。
自分の資格取得時期すらもあやふやになってきましたが、現在でも私の手元には当時の鑑別用道具が残っています。
更には、その後買い足した道具たちも。
今回は、そんな私の鑑別機材コレクションをご紹介いたします。
この話題、ジュエリー学なのかな?
ルーペとピンセットとジュエリー用クロス
まずは基本的な道具です。
ルーペと、ピンセットと、ジュエリー用クロス。
ジュエリー用クロスは先日紹介した通りです。
それ以外の道具について、見ていきましょう。
ルーペは10倍が基本
ルーペは基本的に、ジュエリー用の10倍のものを使用します。
ダイヤモンドのクラリティグレードは、この10倍ルーペで見て判断するんです。
他にももっと高倍率のものもありますが、私はこれ以外はあまり使いません。
ジュエリー用のルーペは、球面収差と色収差の修正を行っています。
まあ要は、特別なレンズだということです。
ちなみに、この写真のタイプのルーペを、全部で4つ持っています。
一番の愛用は、写真左側のネックストラップが付いているもの。
GIAで勉強していた時から使っていて、ずっと一緒に業界を渡り歩いてきました。
ピンセットは挟む宝石によって使い分ける
ピンセットもまた、大切な道具の一つです。
写真では写っていませんが、2本あるピンセットは先端の溝の形が違います。
1つは大きめの色石用で、溝が深めにほってあります。
もう一つはダイヤモンド用(もしくは小さい色石・傷つきやすい色石用)で、ほとんど溝がありません。
ピンセットとは恐ろしい道具です。
ちょっとした力加減で、挟んだ宝石を傷つけてしまうことがあります。
それはダイヤモンドも例外ではありません。
そのため、挟む宝石によって使い分けています。
写真にはありませんが、これ以外にも様々なピンセットがあります。
真珠のような柔らかい素材だと、竹製のピンセットなどを使用しています。
ペンライトとUVライト(ブラックライト)
ペンライトは、写真撮影でも時々登場する道具ですね。
UVライトとは、いわゆるブラックライトのようなもので、紫外線を出します。
ある種の宝石は、紫外線を当てることで様々な色に光ります。
この現象を蛍光と言います。
宝石が発する蛍光は、鑑別における重要な検査の一つ。
出来ることなら1本は用意しておきたい道具ですね。
ただ、UVライトというのは結構高い。
そして大抵の場合、UVライトは電球交換が出来ません。
使い捨てでもったいないなぁ、と思っていたところ、ある業者さんから耳寄りな情報を頂きました。
「100均のおもちゃコーナーによくある、魔法のペンはUVライトとして使えるよ」
(写真、上から2本目のペン型ライト)
魔法のペンとは、蛍光塗料のインクが入ったペンとUVライトがセットになったおもちゃです。
このペンで紙に文字を書くと、一見何も映りません。
ところがUVライトで照らすとあら不思議、文字が光って見えるんです!
秘密のメッセージを送るには、うってつけのアイテムですね!
…………というおもちゃです。
100円なので使い捨てても勿体無くないということもあり、最近100均で見かけるたびに購入しています。
ダイヤモンド用グレーディング道具たち
他にもいろいろな道具があるのですが、とりあえず今回はこれだけを。
上段の左上から、「HCスコープ」「カラーグレード用の台」。
下段左が、「ダイヤモンドの角度を測る定規」「ダイヤモンドの直径を測る定規」。
HCスコープを除いて、正式な名称を忘れました。
下段の2つに関しては、最近ほとんど使っていません。
GIAに通っていた頃、ダイヤモンドを肉眼計測していた際に使っていた道具です。
肉眼で、ダイヤモンドの角度を測っていたんですよねぇ。
あの頃は、目測でも大体角度を言い当てることが出来ました。
今はもう、私の目にあの頃のような精度はないです。
HCスコープ
ダイヤモンドの、ハート&キューピッド(HC)という効果を見るために使用します。
といっても簡易な道具なので、HCの判別には使用できません。
正直、「覗き口に拡大鏡が付いている、色付きのセロファン紙が入った筒」です。
HCの判別では、顕微鏡などのもっと精密な道具を使用します。
ちなみに。
HCとは、カットやクラリティが優れたダイヤモンドにのみ見られる、特殊な効果のことを言います。
上から見たときに弓矢が見え、下から見たときにハートが見える。
かなり厳しい基準をクリアしないと、HCの評価はもらえません。
ある程度以上のクラリティグレードがあり、カットはほとんどの場合Ex以上が必要です。
ところが、たとえExが出ていても、HCの判定が通らないダイヤモンドもあります。
だから、同じExクラスのダイヤモンドでも、HC付きのダイヤモンドはより高値で取引されることになります。
カットに関する専門用語は、こちらの記事を参照してください。
ちなみに「ハート&キューピッド」という言葉は、日本の鑑別・鑑定会社である中央宝石研究所の登録商標です。
そのため、別の会社で鑑定を行った場合は、名称が異なることがあります。
代表的なものでは、AGLジェムラボラトリーの「華標(はなしるべ)」ですね。
判断基準も多少異なるかもしれませんが、どちらも同じような効果のことを指しています。
屈折計と屈折液
こちらは、色石の鑑別で最重要とも言える機材ですね。
宝石の屈折率を測る道具です。
屈折率に関する詳しい説明は、光学のお話になるので省きます。
宝石の鑑別で使用する屈折液(接触液とも言います)は、主に1.81の屈折液です。
屈折計の隣に置いている小瓶が、屈折液です。
たったこれだけの量で、1万円くらいします。
そして、この液はかなり変な匂いがします。
長時間吸い続けると、頭が痛くなる人もいます。
でも、たまに、気分が良くなる人もいる様です。
私は頭痛がする派です。
分光器とカラーフィルター
これもまた、重要な鑑別用器具なのですが。
正直なところ、所有しているのは私の趣味です。
ネットオークションで購入しました。
分光器というのは、白色光(可視光)をスペクトルカラー(虹色)に分解して、光の吸収パターンを見る道具です。
理科の時間に、プリズムの実験ってしましたよね。
あの実験の応用と思ってください。
この分光器という道具は少し厄介で、ある程度訓練しないと何も見えません。
コツや経験が必要な道具なんです。
だから私も見えなくなるのが嫌なので、分光を見る練習用に所有しています。
カラーフィルターは、ある種の宝石の着色などを判断する時に使う道具です。
正直、いらないと言えばいらない。
でもGIAに通っていた頃、この検査が結構好きだったので、改めてカラーフィルター越しに宝石を見てみたいなと思い、購入しました。
どちらも、仕事でも当然使用していますが、趣味の意味合いが強いですね。
どれもこれも愛着ある道具たち
今回は、私の手元にある鑑別・鑑定用道具の一部を紹介いたしました。
気になる道具はありましたか?
使ってみたいと思われた方は、是非ネットで検索してみて下さい。
普通に購入できるものも、沢山あります。
時にはメルカリなどの、ネットオークションに出品されていることも。
通常、鑑別作業はこういった道具から得られたデータを総合的に判断し、結果を出しています。
もちろん、今回紹介した道具だけで鑑別出来ない宝石も沢山あるので、実際の鑑別会社にはもっといろんな機材が揃っています。
蛍光X線分析装置とか、フーリエ変換型赤外分光光度計とか。
ほとんど、大学の研究室のような世界です。
私のように、一般的な宝石商はそこまで専門的な機材は持っていません。
それでも、これらの道具は大切な仕事道具であり、愛着のある道具でもあります。
これらの道具を駆使して、今日もお仕事をしています。