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【ジュエリー本No.30】ヒスイを学ぶならこの一冊!歴史も特性も網羅した本

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ヒスイという宝石をご存じでしょうか?

緑色で半透明の、オリエンタルな魅力あふれる宝石です。

漢字で書くと、「翡翠」。

 

「おばあちゃんのタンスにある宝石」というイメージを抱く方も多く居ますが、実はとっても高価な宝石の一つです。

 

今回は、そんなヒスイの全てを解説してくれる本をご紹介いたします。

 

 

タイトルもズバリ、「翡翠」。

この一冊を読めば、ヒスイの歴史、ヒスイの産地、ヒスイの科学特性、ヒスイの処理、ヒスイの類似石などなど、ヒスイの全てを知ることが出来ますよ。

 

 

「翡翠」はヒスイの解説書

 

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タイトルを見て表紙を見れば、本の中身など読まなくても、何に関する本なのか分かる。

「翡翠」は、それを体現したような本です。

頭からお尻まで、徹底的にヒスイに関することが書かれています。

 

まずはヒスイの歴史。

それからヒスイの科学特性。

鑑別の方法とか、ヒスイ小話とか。

 

特に興味深いのは、日本とヒスイの関係

実は、日本ってヒスイの産地の一つなんです。それも、縄文時代から。

なのに現代では、ヒスイはあまり名の通った宝石じゃなくなった。

糸魚川翡翠は今でも宝石好きな人からすれば有名なのですが、ほとんどの人は知らないですよね。

 

なぜ日本でヒスイ文化が根付かなかったのか。

その理由は様々ありますが、この本では様々ある理由の1つが分かりやすく解説されていました。

 

ヒスイはヤヤコシイ宝石です

 

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ところで、ヒスイと言う宝石は、とってもヤヤコシイ宝石です。

一般的に「ヒスイ」と呼んでいる宝石は、実は2種類の宝石の事を指します。

 

ネフライトジェイダイト

両者は共にヒスイであり、英語だとジェイドと表記します。

でも、両者は全く異なる宝石なんです。

 

ネフライトは、別名「軟玉」。

アクチノライトとトレモライトの集合体(一つの結晶ではなく、目に見えない細かい結晶が集まって出来た石)。

大きな原石が採れることも良くあり、中国では古くから彫刻に用いていた宝石の一つです。

少しくすんだ色合いで、黄色みを帯びているものが多い、というのが私の印象です。

 

化学組成はCa2(Mg,Fe)5Si18O22(OH)2。(化学組成なので、数字は「右下に小さく」なのですが、変換できませんでした)

屈折率は1.606~1.632くらいで、比重は2.95。

産地は、中国や台湾、カナダオーストラリアニュージーランドアメリカロシア・・・・・・

 

対するジェイダイトは、別名「硬玉」。

主に、「ヒスイ輝石」という鉱物の集合体です。

現在高額で取引されるヒスイという宝石は、このジェイダイトの事を指します。

 

化学組成はNaAlSi2O6。

屈折率が1.666~1.680くらいで、比重が3.34くらい。

産地は、主にミャンマー(ビルマ)と日本。

 

ヒスイ、ジェイド、ジェイダイト、ネフライト。

それぞれ何がどう異なるかを正確に説明できる人って、どれくらいいるのだろう?

宝石屋さんでも間違えて覚えている人いるだろうな。

 

ヒスイとは、そういう宝石です。

 

緑色半透明石は鑑別実習のトラウマ

 

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ネフライトとジェイダイトの区別だけでもヤヤコシイのに、ヒスイにはもう一つ厄介な問題があります。

 

それは、緑色半透明石であること。

 

皆さんは、緑色半透明石って、どれくらいの種類あるか知っていますか?

そしてそれらの緑色半透明石って、どれくらい見た目がソックリなのか、知っていますか?

 

宝石鑑別の勉強をしていた時、私はこの「緑色半透明石」というジャンルが大嫌いでした。

だって見た目がほぼ同じ石が、山のようにあるんです。

ジェイダイト、ネフライト、クォーツァイト、プレーナイト、クロムカルセドニー、クリソプレーズ、ダイオプサイト、ハイドログロシュラーガーネット、アマゾナイト、サーペンティン、グリーン・アベンチュリン・クオーツ、グリーンクオーツ、ジャスパー、コモンオパールなどなど。他にもいっぱいあります。

 

この種類の多さと見た目のそっくり具合が、宝石鑑別勉強中の小娘には地獄でした。

更には、ガラスやプラスチックの模造品。

ジェイダイトの処理加工。

鑑別では、こういったものまで看破しなくてはいけません。

想像するだけで、嫌になるでしょ?

 

鑑別実習という実技授業では、生徒は複数の宝石が入ったケースを渡されます。

それぞれの石に対して複数の検査を行い、その結果を基に宝石名を特定する。

1つや2つの検査では、宝石名を特定できないことも数多くあります。確実に他の宝石とは違う、この答え以外にはありえない、そう断言できるまで様々な検査を行って答えを出します。

 

正直見た目で分かる場合も多々あるのですが、緑色半透明石セットはそうもいきません。

「全部同じ石で良くない?」って思う程に、そっくりな石がいっぱい入っていて。

しかも、実際に同じ種類の石が複数入っていることもあるんです。

まさか同じ種類の石が2つ入ってないだろう、と思い込んで、検査の袋小路に迷い込む。

もうトラウマですよね。緑色半透明石。

 

いくらややこしくても実務では間違う訳にはいかない

 

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そんなヤヤコシイ宝石、ヒスイ。

でもね、当然ながら実務で間違う訳にはいきません。

見る目を養うのもそうですが、正しい知識や新しい知識を持っておかないと、お客さんに迷惑かけることになる。

 

まあ、緑色半透明石は、今の仕事ではあまり数多く扱わない宝石なので、正直勉強することを避けていたと言えなくもないです。

……いえ、避けていました。多分、今までは知識足りてなかった。

 

そんな時に出合ったのが、今回紹介した本「翡翠」

ヒスイの歴史、鉱物学・宝石学的な観点から見たヒスイ、ヒスイに行われる処理について。

更には、私を悩ました緑色半透明石の一覧表まで。

 

これほどまでに、ヒスイを詳しく紐解いてくれた本は他にありません。

内容はかなり専門的でしたが、前半のヒスイの歴史は読み物としても楽しめました。

後半の学術的内容は、ある程度の知識がないと読みにくいかも?

 

何にせよ、この本があれば、ある程度のヒスイ知識は網羅できるようになっています。

宝石の専門家なら、一度は読んでおいて損はない一冊です。

 

ああ、それと。

文字が大きくて、70ページほどの薄めの本ですので、半日あれば読めます。

飽き性な私も、一気に最後まで読めました。

気軽な宝石読書にも、丁度良い一冊ですね。

 

 

 

 

「翡翠

著者:飯田孝一

出版社:亥辰舎

 

 

そういえば、この本の著者さん。

以前紹介した、「宝石Q&A」の著者の方です。

 

jewelry-foto.hatenablog.com