パワーストーンはお好きですか?
一時期(今も?)とても人気が出て、老若男女問わずみんな数珠ブレスレットをしていましたよね。
私も、10年以上前に知人にプレゼントでもらったことがあります。
もちろん、今も大切にしています。
ただ私は個人的にはパワーストーンの力に懐疑的、というか信じていないです。
パワーストーンを持つ人が、石に何かの力を感じることは良い事だと思います。
でも、私はジュエリーの売り手。パワーストーン屋をしている訳じゃありません。
そんな売る側人間である私が、「この宝石には〇〇の力がある」と言うのは違うと考えています。
けれど、パワーストーンという存在自体に興味がないわけではありません。
たとえば、「アメシストを身に着けたら、お酒に酔わない」と言われても、私は100%信じません。
でも、どうして「アメシスト」と「酔う」という事象が結びつくのか、一体何が原因でアメシストに酔っ払い防止作用が追加されたのか、という部分には興味があります。
ところが巷に溢れるパワーストーン本は、ただひたすらパワーストーンの効果を紹介するばかりで、私の知りたいことはほとんど書かれていない。
なんとなく理由は知っていても、包括的にまとめた本にはあまり出会えないんですよね。
でも、今回、ある人から面白い本を紹介してもらいました。
本の帯には、「パワーストーンの思想の原点がここに」と。
つまりこの本は、私が興味ある「なぜそんな力があると言われるのか?」の部分を研究する本なんです。
著者ジョージ・フレデリック・クンツとは
まず内容の前に著者の紹介を。
G.F.クンツ博士は、アメリカの鉱物学・宝石学者です。
鉱物に興味がある人や、宝石が好きな人なら聞いたことがある名前だと思います。
また、ティファニーの副社長を務めた人としても有名ですね。
博士の大きな業績の1つといえば、近年人気が高まっているピンク色の宝石「クンツァイト」の名付け親となったこと。
アメリカで発見されたピンク色の石は博士の研究により新種の鉱物と分かり、博士の名を取って「クンツァイト」と名付けられました。
他にもたくさんの業績を残されており、今でもティファニー社のHPには博士の業績が紹介されています。
そんなクンツ博士がまとめたパワーストーン本。
鉱物学者の先生の執筆なので、当然、単純に効果や効能が書かれた本ではありません。
宝石学、鉱物学の一環として、宝石の文化的な歴史を辿る本です。
ちなみに、翻訳は鏡リュウジさん。
鏡リュウジさんのことは、失礼ながら「西洋占星術の人」という認識しかなかったのですが、Wikipediaを見ると翻訳家という肩書もありました。
主に占星術関係の書籍を翻訳されていて、「宝石と鉱物の文化誌」もそういった本の中の一冊だったのでしょうね。
訳文なので難しく感じる部分もある
肝心の内容ですが、やはり元々が英語で書かれた本なので、言い回しが難しかったり、話が飛んでいるように感じる部分がありました。
翻訳本って、英語→日本語の違和感ばかりに目を向けて読んでいると、肝心の内容が入ってこない。
そんな経験をしたこと、ありませんか?
どんなに素晴らしい訳であっても、初めから日本語で書かれた本とは雰囲気が違いますよね。
昔、ハリーポッターの原作を読んだときに感じた、「内容は理解できるけど、なんとなくヴェール一枚挟まっているような感じ」。
内容は分かるんです。
でも、何だか本当に内容をきちんと理解できているか不安になる。
そんなわけで、ハードカバー全300ページ(1ページ2段組み)もある本なのに、2度3度と読み返す羽目になりました。
宝石の使われ方の歴史を知る本
それだけ読んだのだから、しっかり理解できたよね?
と言いたいところですが、何せボリュームある本なのでまだ完璧には程遠いかな、と思っています。
でも、何度読んでも面白いですし、何より「なぜパワーストーンに〇〇という力があるのか?」という答え(に近いもの)を知ることが出来る。
(主に西洋世界で)人類と宝石がどのように関わってきたのか。
昔の人は、宝石をどのような目的で利用してきたのか。
宝石の使われ方を紐解けば、パワーストーンの効果の理由にも、納得がいきます。
パワーストーンは、「なんだか不思議な力を持っている魔法の石」ではありません。
私たち人類が文明を築き上げる過程で生まれた、文化の結晶なんです。
もしあなたがパワーストーンを持っていて、その力についてより深く知りたいと思うなら、必読の一冊ですよ。
「宝石と鉱物の文化誌」
著者:ジョージ・フレデリック・クンツ
訳:鏡リュウジ
出版社:原書房