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【ジュエリー本No.43】Japan Precious 2022夏号に見る”花珠”商売の終焉

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今年もやってまいりました、Japan Precious 真珠Navi

5月出版の業界雑誌の記事を、9月も間近になって書くのはどーなんだろう?

…………まあ、そんなこともあるよね。

 

 

というわけで。

一昨年、昨年のJapan Precious 真珠Navi記事に関しては、こちらをご覧ください。

 

2020年版 ↓

jewelry-foto.hatenablog.com

 

2021年版 ↓

jewelry-foto.hatenablog.com

 

「ん?この記事どっちも6月頭に書いてない?」とか言われても、私には何も聞こえないデスヨ。

 

年を追うごとに、業界の流れが見えてくる。

Japan Precious 2022夏号は、より強くそう思わせてくれる一冊でした。

 

 

写真よりも本文!「総論:真珠市場の動向」に注目

 

 

今年もまた、Japan Precious 真珠Naviの素敵な真珠写真を愛でよう……と言いたいところですが。

今回は、写真よりも本文、特に特集記事に注目してみました。

 

「総論:真珠市場の動向」

 

この特集では、なんだか難しそうな業界動向の話と、経済紙っぽい円グラフ棒グラフ線グラフの羅列が掲載されていました。

 

内容をものすごく端折って言うと、

「最近、真珠がビックリするほど値上がりしてるね! でも国内の養殖業は後継者もなく業者数も先細り。販売の面でも、海外頼りになりっきり。本気で国内市場を活性化しないと、日本の真珠を(卸・小売を問わず)日本人が買えなくなる日も近いのでは?」

国語力と数学力がないので、読み取りが浅すぎるのかもしれませんが。

要するに、そんな内容の話でした。

 

そしてこの「総論:真珠市場の動向」の結末として語られている、「国内市場を活性させるために今後必要なこと」の提案に、ちょっとびっくり。

今後業界に必要なことは、次の3つ

 

1・花珠鑑定書からの脱却、加工処理についての情報開示

2・業界で共通の真珠の品質や選び方について消費者への啓蒙活動の実施

3・高単価時代に備えて高いものを提案し、販売できる接客技術の向上

 

真っ先に、「花珠鑑定書からの脱却」って書いてあることに、驚きました。

今更だと思いますが、ようやく真珠業界も花珠から離れようとしているようです。

 

そこでまず、声を大にして言いたいことがあります。

 

私は、はじめから花珠鑑定書の存在に疑問を感じていたよ!

 

うん、すっきりした。

 

花珠信仰からの脱却は可能か?

 

正直に言うと、私は花珠からの脱却は不可能(もしくは相当の努力と時間が必要)だと思います。

その理由は、3つ。

 

1・今まで花珠に頼り切った商売だったので、販売員の目利き力が落ちた

2・花珠鑑定書を付けることで信頼を勝ち得た小売店は、今更舵を切り替えるのは難しい(顧客の信頼を失う)

3・海外鑑定会社(主にGIAのことです)までも真珠鑑定をはじめてしまっている

 

今まで花珠に頼り切った商売だったので、販売員の目利き力が落ちた

1は、以前から問題視していました。

ジュエリー業界に限ったことではありませんが、どんなに知識を詰め込んだところで、最後に役立つのは己の目利き。

その目利き力が無くても成り立つツールとして使われたのが、花珠鑑定書でした。

 

花珠鑑定が流行り出した時期、業界はどんどん低迷していく真っ最中で。

正直、どこの会社も社員の教育どころではなかった。

一刻も早く真珠を売らないと、給料が払えないような状態にあったんです。

 

結果、多くの会社は花珠鑑定書に頼らざるを得なくなり、そのまま年月が経ってしまった。

 

今では、真珠の目利きができる人間はごく一部。

真珠を売る人間ですら、真珠が見れない。

そんなビックリするような状態も、珍しくはありません。

 

目利きの力はより沢山の真珠を見て鍛えるしかなく、とてつもない時間と努力が必要です。

果たして現在の業界で、販売員にそれだけの教育費をかけられる会社はどれだけいるのでしょうか?

 

ちなみに。

私も、きっとまだまだ未熟者ですよ。

 

花珠鑑定書を付けることで信頼を勝ち得た小売店は、今更舵を切り替えるのは難しい

 

これも、大きな問題だなと思います。

 

花珠鑑定書は信頼に値するものだ、という地位を勝ち得てしまった今。

花珠鑑定書を前面に押し出して、ブランドの信頼度をあげている会社も沢山ありますよね。

 

そんな会社が、今更「花珠に頼るのは良くないよね?」なんて言えますか?

 

ジュエリー業界は、高額なものを扱う業界。

「信頼」は、何よりも大切にしなくてはいけません。

そして、「信頼」を一つでも失えば、なし崩し的に全ての「信頼」を失ってしまうことでしょう。

 

だから、花珠鑑定書で得た信頼は、何が何でも否定できない。

 

そんな会社が花珠鑑定書での商売から脱却するためには、相当の計画を立て、ゆっくりじっくり時間をかけて、花珠鑑定書ではない新たな信頼の道を探さなくてはいけません。

 

でも、国内市場が低迷している今、そんな悠長に舵を切れるものなのでしょうか?

今業界は大しけの中、船員不足の破れた帆船で大海原に放り出された状態です。

花珠鑑定書に頼った会社は、上手な舵きりが求められるのでしょうね。

 

海外鑑定会社までも真珠鑑定をはじめてしまっている

 

花珠鑑定書は、日本ではじまったものです。

そのため花珠鑑定書は、はじめは日本国内でのみ通用するものでした。

 

ところが、先ほども紹介した通り、花珠鑑定書が流行り出した頃、国内市場は低迷を極めていました。

だから真珠業者は積極的に、外国に売りに行ったんです。

花珠鑑定書を付けて。

 

当然のことながら、そのころ海外では花珠鑑定書はあまり知られていませんでした。

でも、高品質で知られている日本のアコヤ真珠についてくる、日本の品質証明の書面。品物も鑑定書もMade in Japan。

困ったことに、これが通用してしまったんです。

特にお隣の大きな国で。

 

あっという間に真珠は鑑定書付きが良い!みたいな風潮が広まって、海外でも花珠鑑定書が求められることになってしまいました。

 

ここで出てきたのが、ダイヤモンド鑑定の大御所、GIA。

私は詳しい経緯は知りませんが、現在はGIAまでもが真珠の鑑定(分類分け)を始めています。

 

もともと、真珠の鑑定は日本国内でも鑑定基準がバラバラです。

そこに、ダイヤモンドの世界基準を作り出した、GIAが進出してきた。

これってつまり、今後はGIAが真珠の鑑定基準を作り出そうとしているのでは?と思うのは私だけなのでしょうか。

 

花珠鑑定書から脱却するどころか、日本の特産「養殖アコヤ真珠」の価値基準を、海外の鑑定会社が勝手にランク付けする

やがて、そっちが価値基準のスタンダードとなった時。

もはや日本に打つ手はないのでしょうね。

 

そう考えると、日本の業界は花珠鑑定書から脱却せず、業界統一の基準を作った方が良いのでは?とも思いますが。

まあ、今更なのでしょうね。

 

結局のところ、初めに「花珠鑑定書」なんておかしなことを始めたのが、誤りだったのではないかな。

そんな風に思います。

 

気が滅入る時は美しい真珠写真で癒されよう

 

長々と、鬱々とした話をしてしまいましたが。

 

気が滅入った時には、ページを遡って、各ジュエラーの美しい真珠写真を堪能しましょう!

 

毎度美しいMIKIMOTOのパールたち。

BVLGARIやBUCCELLATIの奇抜で美しいデザイン。

黒蝶の色味にうっとりする、清美堂。

他にもユニークなデザインの新進企業の真珠ジュエリー写真たち。

 

どうかいつまでも、こんな美しい真珠を日本国内で見れますように。

 

 

「Japan Precious No.106 Summer 2022」

発行:株式会社 矢野経済研究所

出版社:サンクチュアリ出版