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【ジュエリー本No.51】「宝石の価値」で宝石の価値を知る

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今回紹介する本は、新潮新書「知っている人は得をしている 宝石の価値」です。

 

 

この本は、諏訪貿易株式会社会長、諏訪恭一さんが執筆された書籍。

他にも沢山の宝石関連本を執筆されており、当ブログでも過去にいくつか紹介しました。

 

これとか。

これとか。

 

ただ今回紹介する本「宝石の価値」は、上記の本と違い、読み物です。写真はほとんどありません。

タイトルにもあるように、宝石の価値に関する話に重点を置いており、「宝石とは何なのか」を考えさせられる内容になっています。

業界でも重鎮である諏訪恭一さんの考え方を知れるので、一般の方だけでなく、業界の人にもおすすめの一冊です。

 

 

この本で宝石の価値の全てを知れるわけではないけれど……

 

 

「宝石の価値」の書籍内容に触れる前に、タイトルに関して。

別に、この本の内容を知らなくても(悪い業者にさえ捕まらなければ)宝石購入で損はしないです。

 

タイトルの通り、(知らないよりは)知っていた方が得をするんだろうな、そんな内容です。

 

だから、この本の内容を無理やりに知る必要はありません。

場合によっては、「ジュエリーに関するそんな話、知らないままでいた方が良かったかも」と思える内容も、バッチバチに書いてあります。

 

例えばね。

誰もが知る欧米ハイジュエラーが、実は自社製品を「OEM」で作成している。

(OEMとは、とても大雑把に言うと、他社ブランドの製品を全く違う会社が作成すること・それをする会社のことです)

 

欧米のハイジュエラーって、自社工房で全ての商品を作っているイメージありますよね。

だから、高価で高品質なジュエリーになる。

 

でも実は、普通に外注(という言い方は正確ではないかもしれませんが)しています。

全ての商品が、本社のある欧米諸国や自社工房で作られている訳じゃない。

あなたが普段利用する駅の近くにある雑居ビル、その建物に賃貸で入っている日本の小さな業者が作成している場合もあるんです。

日本の製造業、凄いですものね。

 

(一応断っておくと、OEMを行っているのは欧米ジュエラーに限った話ではありません。日本のハイジュエラーも、全ての商品を自社で作成しているとは限らないです)

 

と、そのような一般の方が「知りたくなかった」と思える内容も、さらりと記載されています。

まあ、逆に言えば、正直に宝石業界の内情を曝け出した内容、ともいえます。

 

この一冊で一番共感できるのは合成ダイヤモンドに対する考え方

 

 

「宝石の価値」で繰り返し主張されていることの1つに、合成ダイヤモンドは”宝石”ではない、という話題があります。

「宝石の価値」の中で、私は特にこの点に共感しました。

 

何度も言うようですが、ラボグロウン・ダイヤモンドなどの人工石は断じて「宝石」ではありません。「地球が育んだ"10億歳"の宝石」と「工場で効率よく製造された人工石」は、そもそも比較対象にならないと私は思います。

「宝石の価値」第2章 宝石とは何か より引用

 

その通りだと、私も強く思います。

自然が長い年月かけて生み出した天然石と、工場で商品として販売するために作成した人工の石

全く比較の対象にはなりません。

 

もちろん、人工的に作った石でも、人類の英知・科学文明の発展の証としての価値はあると思います。

合成ダイヤモンドは、昔から工業使用の目的で作られており、私たちの身の回りにも沢山あります。

更に、合成ダイヤモンドがあったからこそ発展した技術・商品も、沢山あるでしょう。

 

今後も、合成ダイヤモンドが私たちの生活に必要なものだということは、間違いありません。

だから、合成ダイヤモンドそのものが無価値だ、なんて思っていません。

 

ですが、合成ダイヤモンドに宝石としての価値を求めることは、馬鹿げています。

合成ダイヤモンドにどのような付加価値を付けていたとしても、工場で作った人工物。

人の意思1つで――そしてその意思とは、大抵の場合が商売するという意思で――自由に生み出せる物体に、宝石という地位を与えるのはおかしいです。

 

大体ね、日本国内では「合成ダイヤモンドのことを宝石と呼んではいけない」、という明確な規定だってあるんです。

 

合成ダイヤモンドは宝石ではない

 

 

なぜ、合成ダイヤモンドを宝石と呼んではいけないのか。

それは、頭に「合成」という言葉が付いているからです。

 

一般社団法人日本ジュエリー協会の規定によると、

〈宝石〉はこれらの中で天然石のみを指す用語とし、合成石、人造石、模造石など
の人工生産物には用いられない。

「宝石もしくは装飾用に供される物質の定義および命名法」より引用

 

とあります。

これは、「宝石もしくは装飾用に供される物質の定義および命名法」の第1章 1-1、つまりは一番初めに記載されている事です。

 

もう少し詳しく見ていきましょう。

 

人が身に着けるために用いられている物質には、次の4つがあります。

  1. 天然石:天然に産出する鉱物
  2. 合成石:天然に存在する鉱物と同じ構造の物質を人工的に作り出したもの
  3. 人造石:天然には存在しない物質を人工的に作り出したもの
  4. 模造石:天然石や合成石、人造石と外観が似ているだけの物質

宝石と呼べるのは、これらの内の1番だけ

だから、合成ダイヤモンドは、合成である時点で宝石と呼んではいけないのです。

 

ちなみに。

ダイヤモンドによく似た外観の、キュービックジルコニア。

これは、人造石です。正式名称は、人造キュービックジルコニア

だから、キュービックジルコニアもまた、宝石と呼んではいけません

 

合成石はジュエリー/宝飾品にもなれません

 

 

ところで、一般社団法人日本ジュエリー協会の規定には、このような記載もあります。

 

ジュエリー(宝飾品)とは、宝石と貴金属およびその合金を用いた装身具をいう。  

「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 」より引用

 

つまり、宝石ではない合成ダイヤモンドは、ジュエリーにも、宝飾品にもなれません

これは、「ジュエリーおよび貴金属製品の素材等の表示規定 」の一番初めに書かれている内容です。

 

だから、そもそも宝石じゃない物質の合成ダイヤモンドが、宝石としての価値を持てる訳がないんです。

 

ここでもう一つ。

近年、合成ダイヤモンドは、ラボグロウンダイヤモンドとか養殖ダイヤモンドとか、いろんな商業名をつけられています。

これらも、全て消費者を欺く、または誤解を招く表記方法だと言えます。

 

どんな言い方をしても、どんな理屈をつけても、合成ダイヤモンドは宝石じゃないし、ジュエリーにもなれません。

あくまでも、ただ工場で生産した人工物でしかないのです。

奇麗な言葉、耳障りの言い売り文句に流されて、合成ダイヤモンドを購入することは、私はオススメしないです。

 

だけど合成ダイヤモンド自体の否定はしません

 

 

最後に1つ断っておきたいことがあります。

 

私は、合成ダイヤモンド(または合成ダイヤモンドが付いている装飾品)を全否定するつもりはありません。

合成ダイヤモンドについて正しい知識を得て、その上で合成ダイヤモンドに魅力を感じるなら、その人にとっては合成ダイヤモンドは購入するだけの価値がある品物です。

 

合成石の魅力に惹かれた。

値段的に手ごろだから欲しい。

こういった意見に、何ひとつ異議はありません。

 

ただ声を大にして言いたいのは、「宝石の価値」でも述べられているように、

合成ダイヤモンドに宝石としての価値を与えることには、大反対!

ということです。

 

合成ダイヤモンドに限らず、合成石というのは工場で作っている物質・工業製品です。

天然の宝石と比べるような物質ではないし、ましてや天然石を上回る価値がある訳でもない。

しかも残念ながら、ルールにより合成石は宝石とも呼べませんし、セッティングされてもジュエリーにも宝飾品にもなれません。

 

合成ダイヤモンドを購入するなら、是非このことをきちんと理解しておいてください。

そして、もしあなたが合成石の売り手なら、是非是非、あなたの大切なお客様にこのことをきちんと丁寧に説明してください。

間違っても、天然ダイヤモンドと同じもの、だなんて素人丸出しの説明はしないでください。

 

そんなことを思いながら、「宝石の価値」を読んでいました。

 

 

あ、そういえば。

6章に、Q&Aコーナーがあるのですが。

ここを読んでいるとこの本を思い出します。

jewelry-foto.hatenablog.com

Q(質問)を、バッサバッサ掻っ捌くA(答え)。

切れ味の良いナイフのような回答、どうぞあなたもお楽しみください。

 

「知っている人は得をしている 宝石の価値

著者:諏訪恭一

出版社:新潮新書