今回紹介する本は、山口遼さん著「ジュエリーの世界史」です。
昭和62年に新潮社選書として出版された「ジュエリイの話」の文庫版にあたる本で、平成28年に発行されました。
山口遼さんといえば、以前紹介したこの書籍の作者でもあります。
この方の書く内容は、本当に面白いですよ。
「ジュエリーの世界史」はジュエリーの歴史を辿る本
「ジュエリーの世界史」は、人と装飾品・宝飾品の歴史を知ることができる本です。
縄文時代の日本の装身具から、現代のハリーウインストンの歩みに至るまで、ありとあらゆる国、時代の装飾品や宝飾品の変遷を知ることができます。
まだ文明と言えるかどうかも定かではない古い時代、人はなぜ装飾品を身に着けたのか?
いつの頃からジュエリーをまとうことが富の象徴となったのか?
宝飾品素材の歴史、デザインの歴史。更には現代の日本における、宝飾業界のあり方にまで言及。
本当に、あらゆる角度からジュエリーの世界史を学ぶことができる一冊といえます。
巻末付録「正しい宝石の買い方、教えます」はジュエリーを買う全ての人に読んでもらいたい
私がこの本を買った目的は勿論、ジュエリーの歴史を学ぶためです。
でも最後まで読んで、最も「買ってよかった」と思えたのは、本文じゃなくて、巻末付録の方でした。
文庫版の付録として、巻末に「正しい宝石の買い方、教えます」という表題の「おまけ」が20ページ弱付いています。
その内容は、
- 良いデザイン、悪いデザインの見分け方
- こういうお店や売り文句には要注意
- 宝石やジュエリーの正しい買い方とは
これ、面白そうな内容でしょう?
実際その内容はどれも、買い手の立場に立った、素晴らしいアドバイスでした。
包み隠すことをしない本当のアドバイス
筆者の山口さんは、当たり前ですが、宝飾業界の方です。
そのため「宝石の買い方に関するアドバイス」を語られても、結局それは「売り手に有利なアドバイスではないか?」という疑問は払拭されないですよね。
だって、宝石売る側は、宝石売ってナンボ。どうせアドバイスするなら、消費者が買いたくなるように仕向けるのが普通だと思いませんか?
でも、この方の考え方は全然違いました。そんな浅はかなこと、なさいません。
山口さんは、以前紹介した「ブランド・ジュエリー 30の物語」でも書いたように、なんでもズバズバ本当のことを、出版物に書く方です。
この巻末付録の内容でも、宝飾店にとっては耳の痛い話や、突かれたくない重箱の隅をドリルで抉るようなことを仰ってる。
本当に、ジュエリーを扱う仕事をしている者として、「居住まいを正します」と宣言したくなるような内容でした。
巻末付録を読むために購入しても損はありません
ジュエリーの歴史を学びたい、と思って「ジュエリーの世界史」を手に取る。
おそらくそれが、この本を読む際の一番正しい姿勢なのでしょう。
そしてその学習欲に、「ジュエリーの世界史」は全力で答えてくれます。
読みごたえもあったし、新しい知識も増えた。
古代日本のジュエリーなんて、私この本を読むまで知らなかったですから。
でもね、多分ジュエリーマニアではない普通の人にとっては、そんな内容楽しくない。
当たり前のことです。
興味がない本を、どんなに薦められても食指は動かないですよね。
でも私は声を大にして言いたい。
全338ページ、その大半は読まなくてもいい。
目次を見て、興味あるページだけ読めば十分。
その代わりに、最後の20ページ!
ここだけは是非是非、一読してみてください!
特にこれからジュエリーを買おうと考えている方、絶対に知っておくべき内容です。
この内容を知っているか知らないかで、あなたが損するか得するかが決まります。
業界に半世紀以上携わる重鎮のアドバイス、是非とも手に取って確認してください。
本当に、巻末付録を読むためだけに買っても、損はありませんよ。
本の紹介で、本文より巻末おまけをお勧めするって、どうなんだろう………
「ジュエリーの世界史」
著者:山口遼
出版社:新潮社