宝石を扱う、特にダイヤモンドルースを扱う仕事をしていると、いつも感じることがあります。
それは、取扱ってる商品がめちゃくちゃ小さい!ということ。
一般の人が普通に小売店で購入できる商品で、ここまで高額な極小商品は他にあるでしょうか?
今回は、このダイヤモンドのサイズのせいで起こりうる、重大な問題についてご紹介します。
それは、宝石を扱う仕事をしている人なら一度ならず経験したことがある、「ダイヤモンド飛ばしちゃった!」問題。
宝石撮影の裏で繰り広げられている一大事。
どうぞ皆さんもお気を付けください。
ダイヤモンドは高額な極小商品
ダイヤモンドは、品質にもよりますが、0.3ctですら普通に何十万円もします。
そんな0.3ctダイヤモンドの実際の大きさをご存じですか?
直径は約4.3mm、深さは約2.6mm、重さは0.06g(1ct=0.2g)です。
小さいですよね。
そんな小さいダイヤモンドでも、小売り価格にすればサラリーマンの一か月の給料以上になることもある!
勿論、ジュエリーになっていれば、ある程度の大きさになります。
ですが、ルースの状態ではとにかく小さい。
0.3ctなんて、ダイヤモンドの中ではある程度大きい方なんです。
もっと小さい0.01ctだって、普通に取引されています。
0.01ctの直径は、約1.3mm。
1.3mm!!
くしゃみ厳禁!簡単に飛んでいくダイヤモンド
例えば、事務所のデスクで0.01ctのダイヤモンドの選別を行うとします。
日中暑くて、少し窓を開けていたとします。
強い風が吹きます。
あ。
または、ピンセットでダイヤモンドを持っている時に。
くしゃみが出そうになって。
我慢したけれど。
あ。
これは、決して珍しい出来事ではないです。
どんなに緊張感をもって仕事をしていても、ありうることです。
ダイヤモンドは、不注意とか関係なく、簡単に飛んでしまうものなんです!
転がった先に隙間が!
そうして飛ばしてしまったダイヤモンド。
道具も家具も何一つない広い部屋の中でなら、たとえダイヤモンドを飛ばしてしまっても何の問題もないでしょう。
頑張って、見つかるまで探すだけです。
けれど、そんな何もない部屋でダイヤモンドを扱う仕事をしているはずがないですよね。
デスクがあったり、道具があったり、資料があったり、他の宝石があったり。
隙間があったり。
ころころと、転がった先に。
数ミリの隙間が。
「あ!」と思った時には、おむびころりん。
怖いのは動かせない家具の隙間
おむすびころりんしたところで、動かせる家具の隙間なら問題はありません。
本当に怖いのは、備え付けの動かせない家具等の、出口のない隙間に入った時です。
上の写真の場所が、まさにそれ。
2mmの隙間があれば、ダイヤモンドは十分落ちます。
2mmの隙間があれば、ダイヤモンドは十分落ちます。
2mmの隙間があれば、ダイヤモンドは十分落ちます!
当然ですが、そんな場所におむすびころりんしたら、二度とダイヤモンドは戻りません。
建物や家具を破壊するしかない。
ころころと転がるダイヤモンドで、何度肝を冷やしたことか。
飛ぶのは仕方がないので対策をしましょう
宝石を扱うプロでも、ダイヤモンドを飛ばしてしまうことはあります。
注意深い人でも、緊張感Maxで仕事を続ける人でも、一度は必ずやらかしてしまいます。
だから飛ばすこと自体は、問題なくはないけど、問題じゃない。
重要なのは、おむすびころりんする場所を如何に減らすか。
最も簡単な対策は、目張り。
私が以前働いていた鑑定会社では、ありとあらゆる場所をビニールテープで目張りしていました。
見えるところも見えないところも、継ぎ目という継ぎ目、穴という穴は全て目張りです。
デスクも棚も、全く隙間がありません。
隙間が一切ない会社でした。
普通の事務所でここまでできないので、せめて、ダイヤモンドなどのルースを扱う仕事をする際は、目に留まる場所くらいは養生テープなどで穴を塞いでおきましょうね。
肝が冷える上に、後悔しかありませんから。
「経験者は語る」とは、このことです。