今回紹介するのは、ジュエリーとは関係の薄い「普通の小説」です。
偶然本屋さんで見かけ、帯に書いてあったセールス文に惹かれて、つい衝動買いした2冊の本。
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こんな紹介文を見たら、買うしかない!
とはいえ、『ぎんなみ商店街の事件簿』は普通の小説。
このジュエリーブログで紹介するのはおかしいのでは?
……と、思うでしょう?
ところが、今回この小説を読んでいると、ちょっと気になる記述を見つけてしまいました。
今回は、普通の小説の中にみる「宝石屋さん」について考えていきたいと思います。
※ 今回は、少しだけ『ぎんなみ商店街の事件簿』の内容に触れた記載があります。
露骨なネタバレは避けるようにしていますが、新鮮な気持ちで小説を読みたい方は、小説を読む前にこの記事を読まない方が良いかもしれません。
『ぎんなみ商店街の事件簿』は2冊読むことで完結する小説
今回紹介している『ぎんなみ商店街の事件簿』は、2冊一組の小説です。
上巻・下巻の2冊、という意味ではありません。
『ぎんなみ商店街の事件簿』は、brother編とsister編の2冊に分かれています。
ひとつの事件を、異なる2組の家族(4兄弟と3姉妹)が、別の視点で解決していく。
同じ事件を追っているので、兄弟と姉妹が鉢合わせすることもあるけれど、結末は何故か全く別。
もちろん、パラレルワールドとかじゃないので、同じ時間軸、同じ舞台で事件は起こります。
けれど、2組が辿り着く結末は、全然異なる。
そんな不思議な2冊構成の物語になっています。
2冊は読む順番に決まりがありません。好きな方から読めます。
ただ、両方の本を読まないとスッキリ解決できない謎も含まれていて、2冊読み終わって初めて納得いく結末が見える、といった構成なんですね。
面白い作りの小説でしょう?
『ぎんなみ商店街の事件簿』と宝石店
ここからは、小説本編の内容に関わる記述があります。
未読の方、内容に関する記述を知りたくない方は、まずは小説を読むことをおすすめします。
この『ぎんなみ商店街の事件簿』。
私はsister編から読み始めましたが、冒頭辺りでちょっと引っかかる記述を見つけました。
それは、商店街の街並みを描いた文章です。
誰が買うのかよくわからない、怪しげな看板の宝石店もある。
(ぎんなみ商店街の事件簿 sister編 17P より)
このシーンは、古い商店街の街並みを描く記述なのですが、宝石屋としては引っかかるシーンでした。
(一般の人は、街の宝石店をそんな目で見てるの?)
更に気になることに、この宝石店のオーナーは占いも出来る人という設定。
なんとなく、怪しさに拍車がかかっているのでは?
小説の記述は綿密に計算されたもの
一応断っておきたいのは、この小説は別に宝石店を揶揄しているわけではありません。
小説を最後まで読めば分かりますが、このシーンも含め、全て”このように記述する必要がある”シーンでした。少なくとも私は読後にそう感じました。
そもそも小説なのですから、あちこちに言葉の仕掛けが仕組まれています。
ましてや『ぎんなみ商店街の事件簿』は、構成も独特な小説。
本文は本当に綿密に練られており、宝石屋の記述はこのような形でなくてはいけないものだったんです。
だから作者もきっと、「宝石店=怪しいもの」という思いは無かったはず。
必要だったから、そういう書き方になっただけ。
……
…………
………………
……………………なんですけれど。
それでもやっぱり、気になる。だって私は宝石屋ですから。
確かに、昔の商店街には宝石店が1つ2つありました。
あまりお客さんが寄り付いているようには見えないお店も、あったかもしれません。
ショーケースに埃のついているお店も、あったかもしれません。
看板が怪しく感じるお店も、あったかもしれません。
でもだからって、「誰が買うのかよくわからない」「怪しげな看板」は酷くないですか?(笑)
宝石業者以外の人には、商店街の宝石店ってそんな風に見えていたのかなぁ。
『ぎんなみ商店街の事件簿』
本当、是非一度ご一読ください。
そして、是非是非あなたが感じた宝石屋の印象を教えて下さい。
「ぎんなみ商店街の事件簿」
著者:井上真偽
出版社:小学館