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【ジュエリー本No.13】「水晶庭園の少年たち」と触れ合う際は純粋な心で

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久々に、実用書以外のジュエリー本をご紹介します。

 

蒼月海里さん著「水晶庭園の少年たち」

Web集英社文庫で連載されていた小説の、文庫版です。

 

 

タイトルを見てわかるように、主人公は少年。

思春期の少年の、心の成長を描いた物語です。

 

もちろん、宝石、鉱物の話をがっつりと交えながら。

 

 

「水晶庭園の少年たち」を読むと学童図書を思い出す

 

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「水晶庭園の少年たち」の主人公樹(いつき)は、内向的な面を持つ中学生の男の子。

愛犬を亡くして塞ぎ込んでいた樹は、ある日、自宅の蔵で亡き祖父の鉱物コレクションと、石精(いしせい)の雫(しずく)に出会ったのです。

その日から、樹は精霊である雫の助けを借りながら、様々な困難(といっても、中学生らしい困難ですが)に立ち向かって行くのでした。

 

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はじめて「水晶庭園の少年たち」を読んだとき、私はとても懐かしい感じがしました。

こういう物語って、小学生の頃に図書館でよく読んでいた気がします。

 

学童図書、というのでしょうか。

何でもない毎日の中に、少し不思議を混ぜる。

その経験を通して、少年が精神的な成長を遂げる。

しかも、物語がとても唐突に始まり、唐突に展開する。

私はこういった物語を小学生の頃、図書館で片っ端から読み漁っていました。

 

「水晶庭園の少年たち」は、そんな学校図書館にあった本と同じ匂いを感じるお話です。

 

少年の悩みを鉱物の知識で解決

 

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「水晶庭園の少年たち」で特に気になったのが、中学生の少年の悩みを、鉱物学の知識をもって解決する点。

このやり方が、ものすごく独特なんです。

 

例えば、物語の初め、樹は愛犬を亡くしたことにひどく落ち込み、何日も学校を休むほどでした。

そんな彼に、雫はアドバイスをします。

 

愛犬は死ぬことで分子に分解され、世界に溶けた。

だから樹の周囲に、世界中に愛犬が居るのと同じ。

そして愛犬を構成していた成分は、いつかこの地球のどこかで鉱物として生まれ変わることもある。

そう考えると、寂しくはないでしょう?

 

掻い摘んで書くと、こういう内容なのですが、実際の小説内ではこのようには書かれていません。

化学式や鉱物名を用いて説明する。

あまりに科学的すぎて、途中で何の話をしているのかがわからなくなる。

 

上のようなことを解説するために、水酸燐灰石の化学式周期表カルシウムの解説がいると思いますか?

雫はそのような知識を持ち出して、樹の塞ぎ込んだ心を立ち直らせるのです。

 

独特の世界観が面白い

 

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正直、大人の観点からすると、雫の解説は「樹はなぜそれで納得できるの!?」とツッコミたくなります。

 

そもそも、自宅の蔵に知らない少年(雫)がいたら、普通両親に言うよね?

突然姿を現したり、突然消えたりする少年(雫)を見たら、もっともっと驚くよね?

 

初めに「水晶庭園の少年たち」を読んだときは、私もあまりにもツッコミどころが多いこの物語に違和感を感じていました。

 

でもね、違うんです。

この物語の魅力は、初めに私が感じた通りなんです。

「水晶庭園の少年たち」は学童図書を読んでいるようで、懐かしい。

 

例えば、あの有名な「おしりたんてい」を読んで、トリックがおかしい! とツッコミませんよね。

だって、「おしりたんてい」に本格ミステリーを求める人なんていないんですから。

 

あ、読んだことがない方は、是非どうぞ。

意外と大人もはまれますよ、おしりたんてい。

 

「水晶庭園の少年たち」も、同じなんです。

小学生・中学生の心に戻って、純粋に世界を見直す話。

ありえるか、ありえないかは二の次でしかありません。

 

真っ白な心で「雫」という日常外の存在を感じ、「樹」という一人の少年が成長するのを見届ける。

余計なことを交えずに読むことで、爽やかな読後感を味わってみてください。

 

 

 

あ。

もしかして、小説にあれやこれやとツッコミを入れるのは、大阪の人だけですか?

すみません、私は生粋の大阪人なので、時にはWeb広告にさえツッコミを入れます。

 

 

「水晶庭園の少年たち」

著者:蒼月海里

出版社:集英社