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【ジュエリー本No.44】「真珠の世界史」で真珠を取り巻く歴史を知り尽くす

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今回紹介する本は、出来るだけ多くの方に読んでもらいたい書籍です。

 

 

真珠好き、ジュエリー好きの方。

宝石を扱う業界に入りたい方。

 

お手元に一つでも真珠を持っている方。

これから真珠という宝石を手にしたいと考えている方。

 

あと、真珠検定受ける人も必読です!

この歴史を知らないと、真珠の資格を持つ意味がありません。(と、私は勝手に思ってます)

 

あなたが触れる、その美しい真珠。

そこにはどんな歴史が刻まれていて、そしてこれから真珠はどのような未来を辿るのか。

実は、過去も現在も未来も、真珠には暗い物語が溢れています。

「綺麗」という言葉では済まされない、生々しい人間の物語です。

 

真珠に関わる全ての人、ひいては全ての日本人に読んでいただきたい。

「真珠の世界史」は、そんな本です。

 

 

 

天然真珠の時代から現代まで真珠の歴史を辿る本

 

「真珠の世界史」という本の内容を、大まかに見て見ましょう。

 

天然真珠採集~人力で真珠を採る難しさと恐ろしさ~

「世界史」というくらいなので、本の初めは人類が初めて真珠という宝石を手に入れたところから始まっています。

 

昔は、ダイヤモンドよりもずっと高価な宝石だった真珠。

ヨーロッパ各国(だけではないですが)は、世界中の天然真珠の漁場で、人力に頼り真珠貝を取り漁っていました。

それこそ、現地の人間を一日中海に潜らせ、文字通り使い捨てにして、です。

 

なんと、真珠貝採集のために全ての現地民が死に絶えた、そんな場所もあったそうです。

 

恥ずかしながら、私はこの歴史を、今までぼんやりとしか知りませんでした。

朝から晩まで、息の続く限り(もしくはそれ以上に)人を海に沈めていたらどうなるか。

溺れる、肉食魚に襲われる、病に侵される。当たり前ですよね。

けれど、貧しい人々は一粒の真珠さえあれば、生涯の稼ぎを手に入れられた。

自分の命か、家族の生活か。

 

そして、海外にまで進出していた外国人もまた、命の危険を冒しての真珠探索の旅でした。

現地に着くまでに息絶えたり、ようやく真珠を手に入れても海賊などに襲われ己の命ごと持っていかれたり。

 

命も宝石も、奪い合いの世界。

何も真珠だけのことではありません。宝石の世界には、よくある話です。

もちろん、現代においても、ですよ。

 

養殖アコヤ真珠の誕生と真珠王国日本の躍進

やがて、世界は養殖真珠の時代に入ります。

これまでは、命がけで海に潜って採っていた真珠を、人が操作して作り出すことができる。

この養殖産業の世界的中心地は、真珠養殖方法を確立させた日本でした。

何十年間も世界を席巻した、真珠王国の始まりです。

 

あまり一般には知られていないようですが、真珠養殖が可能となってからというもの、(多少もめごとはあったとはいえ)世界中が日本の養殖真珠を買い漁っていました。

実は、バブル期くらいまでは、日本の養殖真珠はそのほとんどが輸出品でした。

国内に流通するのは、ごく一部(2割ほど)。

 

戦前から、戦後にかけて、養殖アコヤ真珠がどれほど外貨獲得に役立っていたか。

今となっては、業界にいる人でも知らない人が居ますが、真珠は確かに日本の輸出品の花形だったんですよ。

 

ところが、世界の競争力、日本の不況、更には環境問題、様々な理由があり、日本の主要産業「養殖アコヤ真珠」は凋落していきました。

おそらく、今私たちはその最後の時代に差し掛かっているのでしょう。

終焉は、もうすぐ手の届く場所にまで迫っているのだと思います。

 

 

と、このような恐ろしいお話が、「真珠の世界史」では詳しく解説されています。

 

私がここで紹介した内容など、ごくごく浅い一部でしかありません。

読後には、世界を見る目が変わってしまう。

そんな深い内容の一冊です。

 

内容は暗いが歴史を知ることには意義がある

 

 

本というものは、作者の意向を表現する場であって、その内容の全てが「この世の真実」であるとは言えません。

でも、「真珠の世界史」に書かれた内容(特に日本の養殖の歴史)は、私がこの業界の中で実際に聞いてきた話と、ほぼ合致していました。

 

養殖業者の減少やその理由。

日本の業界が海外勢に負けた理由。

真珠養殖がどれほど海の環境に影響を与えたか。そして、その対策が如何に遅れたか。

 

これらの話題は、私も実際に年長者から散々聞かされてきた話題です。

その上で思うのは、「業界の方は、決して様々な問題から目を背けた訳ではない」ということです。

みなそれぞれに、必死に生き残りをかけて頑張ってきたけれど、時代が、経済状況が、そして日本人の気質そのものが、現在の日本の養殖真珠業の凋落の状況を作り出した。

 

こんな状況を生み出した、先人たちが悪い。

そんなことを後の時代の人間がいくら騒いだところで、意味がない。

大事なのは、ここまでの歴史を知る事。

私たち日本人がどのような気質を持ち、どう生きてきたのかを知ることです。

 

人の世界では、発展したものは必ず凋落する日が来ます。

その事実に嘆いても、仕方がありません。

たまたま、自分はこの時代に生まれただけ。

 

私は、今、真珠王国日本の終焉に立ち会っているのだと感じています。(特に、この本を読んだことで、その思いが強くなりました)

だったら、こうなった理由にケチをつけるのではなく、今ここに居る私が出来ること、やるべき事が何なのかを考えたいかな、と思いました。

それが、凋落の阻止のための努力でもいいし、消えゆく業界の最後を見るでもいい。

何かできることを、やってみたいなぁ。

 

…………そんなことを、鈴虫の声を聞きながら考える、読後。

というわけで、私は今「真珠の世界史」を読んで、やたらと深い感慨に耽っています。

 

読書の秋の始まりに相応しい、読み応えある一冊でした。

 

真珠養殖の歴史って連続テレビ小説の題材になりませんか?

 

 

暗い話題ばかりも嫌なので。

1つ、私からどうしても提案したいことがあります。

 

NHKさん!!

真珠養殖の歴史、是非とも「連続テレビ小説」の題材に取り上げて下さい!!

 

絶対、一年間視聴者釘付けになる内容になりますよ!!

 

まず、一般の人は、「御木本幸吉は養殖真珠を発明した人」って思っていますよね?

MIKIMOTOというブランドの印象とも相まって、上品な好々爺的印象をお持ちの方もいるのではないでしょうか?

 

でも、私が今まで聞いてきた御木本幸吉の印象は、「凄く商売がうまかった、イケイケな人」です。

世渡り上手で、剛健で、商売を進めるために時には周囲を泣かせることも厭わない。

だからこそ、「東洋人」風情が「白人」相手に喧嘩(養殖真珠に関する欧州での裁判)も出来た。

だからこそ、明治天皇に「世界中の女性の首を真珠でしめてごらんにいれます」なんて豪語できた。

 

そんな人が、コツコツ真珠養殖の研究に励んで真円真珠の発明を成し遂げたと思いますか?

私の中では、御木本幸吉とは「養殖真珠を必死に発明した人」ではなく、「日本の養殖アコヤ真珠を引っ提げて、ヨーロッパの金持ちの頬を殴りに行った豪傑なんですよね。

 

対して、養殖真珠の本当の真珠発明家は、確かに他に存在します。

それは見瀬辰平や、西川藤吉をはじめとする、沢山の研究家・養殖家たち。

御木本幸吉と彼らは、互いの商売とプライドをかけて、養殖の妨害や特許を巡る駆け引きなどの、対立を繰り返しました。

そこには複雑な人間同士の駆け引きや、ドラマが溢れている訳で。

 

御木本幸吉の次女の嫁入り先が、真珠養殖研究のあの人で~、とか。

あの人は結局、大きな発明をしたのに若くして亡くなって~、とか。

明治日本社会なので、伯爵クラスの大物が登場したり。

国を挙げての外貨獲得のための動きがあったり。

養殖真珠に関する研究所の財政難問題が起きたり。

貧しい生活の中で毎日養殖研究に明け暮れた研究者がいたり。

 

そしてようやく出来上がった、世界初の真円の美しい養殖アコヤ真珠!

 

ところが、世界に向けて販売を始めた矢先に、また新たな問題が…………

やがて舞台はヨーロッパへ。

果たして世界は、日本の新しい技術を受け入れるのか!?

御木本幸吉は本当に、「世界中の女性の首を真珠でしめて」しまうのか!?

 

 

世界中の女性を魅惑した、神秘の宝石「養殖アコヤ真珠」。

その世界裏側で起きた、男たちの壮絶な物語。

歴史超大作「真珠の王」

さあ、あなたの首も、真珠でしめてごらんにいれましょう。

 

 

………ほらね、連続テレビ小説の題材として、打って付けだと思いませんか?

誰か原作書いてくれないかなぁ。

 

 

「真珠の世界史 富と野望の五千年

著者:山田篤美

出版社:中公新書