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【ジュエリー学No.9】処理した宝石はお好きですか?処理とは悪ですか?

今日このような記事を見つけました。

 

文字もスケスケ透明ヒスイ 作った教授「これほど愛されていたとは」

 

淡く半透明の色合いが美しい宝石ヒスイ(翡翠)。超高圧をかけることで、文字が透けて読めるほどの「透明ヒスイ」を作り出すことに愛媛大学などの研究チームが成功した。

 

 

記事の内容をものすごく簡単に言うと、

  • ヒスイという宝石は通常、半透明不透明
  • 今まで「ヒスイにすっごく高い圧力を加えると、透明になるのでは?」と推測されていた
  • 愛媛大学で実際に研究したら成功したよ!
  • 今後はもっともっと透明にするのが目標です

 

私は朝日新聞デジタルに登録していないので、無料で読める場所しか読んでいません。

なので、「記事内容」と言っても、出だしの部分だけだと思います。

興味がある方は是非全文ご覧ください。

 

それにしても凄いですよね。技術って。

宝石の大部分は工業用に用いるものなので、こういった「透明ヒスイ」もそのうちいろいろな分野で活躍するのでしょうね。

 

でもこういう記事が上がると、必ず出てくる話題があります。

 

ジュエリーなどで用いる「宝石」の分野でも、応用できるんじゃない?

 

 

宝石に利用できる技術

 

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私はそこまで技術に聡くないので、確実なことは言い切れません。

でも、おそらくこの技術は、宝石ヒスイにも利用できるのでしょう。

 

ヒスイという宝石については、以前1冊の本を紹介しました。

jewelry-foto.hatenablog.com

 

ここでも紹介したように、ヒスイは「緑色の半透明石」です。

中でも最高品質と言われているのは、「ロウカン」と呼ばれる「濃い緑色で透明度の高いもの。

 

つまり、透明度が高い=ハイランクなヒスイ。

だから今回の技術が利用できれば、より価値の低いヒスイを処理することで、更に高価なヒスイに変化させることが出来る。

かもしれない。

 

人工的に、ヒスイの価値を上げられるということです。

ただし、経費が合えばの話ですけれど。

高圧処理というのは、当然ながら経費がかかりますからね。

経費と利益のバランスがとれないと、やる意味はないのかなぁと思います。

 

処理した宝石=合成石ではない

 

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ところで、一つ注意しておきたいことがあります。

宝石学において、「処理=合成」ではありません。

全然違うので、是非覚えておいてください。

 

合成というのは、宝石の生成を人の手で行ったもの

処理というのは、天然・人工に関わらず)既に存在している宝石に対して、何か手を加える行為

 

だから処理には、天然石の処理もあれば、合成石の処理もあります。

「処理した宝石=合成石」は、完全に間違いです。

また逆に、「合成石=処理が行われている」も間違い。

処理をしていない合成があっても、おかしくはないでしょう?

 

今回のヒスイの技術は、「処理」の話。

処理する対象は、天然でも合成でもどっちでも良いんです。

 

たまに誤認されている方がいるので、一応の注意書きです。

 

処理されて価値を改変されたヒスイが出回る!?

 

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では、本題に戻ります。

 

この記事を見ると、このような不安を覚える方もいるかもしれません。

ヒスイの価値を上げることが出来る処理方法が出来たら、不当に価値を改変された(=意図的に高値になった)ヒスイが出回るのでは?

その不安は、もう今更言っても遅い話題です。

 

そもそも、既にヒスイには様々な処理が存在しています。

というか、ほとんどの宝石には処理が存在します。

もっと言ってしまえば、宝石は基本的に処理がされているものです。

処理せずに出回っている宝石の方が、ずっと少ないです。

 

今更ヒスイの処理が1つ2つ増えても、仕事が増えるのは鑑別機関ぐらい?

もちろん、販売者も注意が必要ですね。

 

宝石の処理なんて、もう100年以上前から行われていることです。

そもそも、なぜ処理が不当だと思うのでしょうか?

処理って、してはいけない行為なのですか?

 

「天然未処理宝石=高価」という間違った価値観

 

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処理の是非を問う前に、処理をしていない宝石に対する間違った価値観について、知っておく必要があります。

 

よく「天然未処理宝石は高価な宝石」という考えている人がいます。

ハッキリ言えば、天然未処理は必ず高価である訳じゃありません。

本当に高価な天然未処理宝石とは、「処理する必要がない程に、高品質で産出した宝石」のことです。

 

宝石の中には、低品質でも処理せずに流通しているものがあります。

 

例えば「処理前の粗い感じが美しい」と感じる場合。これは個人の好みや美意識の話になります。

ジュエリーで言うところの高品質とは、価値観そのものが異なるので、比べようもありません。

 

または、処理する意味がない宝石の場合。

処理をすれば、何でもかんでも高品質に変わるわけじゃないです。

また処理をするということは、その分経費が掛かるということ。

経費をかけた分以上に、価値が上がらないなら、処理なんてする意味がありません。

 

つまり、天然未処理宝石は3つの種類に分かれるということです。

  • 処理が不要なくらい高品質な宝石
  • 低品質でも自然に産出したそのままの姿で売り出す宝石
  • 処理しても仕方がない宝石

これらが、「天然未処理宝石」の看板を付けられて流通するんです。

 

だから、ね。

全て一括りに「高価」とは言えないでしょう?

 

処理することは悪いことですか?

 

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天然未処理宝石が、必ず高品質・高価格であるとは言えないのに、なぜ処理石よりも上にみられるのか。

その理由は、「処理=悪い行為」と捉えられているからではないでしょうか。

だからこそ、「処理をしていない=良い宝石=高価」という図式が成り立つと思うのです。

 

でも現実はそうじゃない。

高品質でも処理する場合もあるし、高品質だから処理しない場合もある。

低品質だから処理する場合もあるし、低品質でも処理しない場合もある。

天然未処理宝石=高品質と言えない以上は、天然未処理宝石=高価とも言えませんよね。

 

それに「処理」は工程であって、良い悪いの範囲の外にある行為です。

だって、宝石はルースになった段階で、「カット」という「人為的処理」をされていますよ?(通常、宝石のカットを処理とは呼びませんが)

一切の処理がなされていない、天然そのままの宝石だけが「良い宝石」「正しい宝石」なら、原石以外は全部「悪い宝石」になってしまいます。

 

もちろん、消費者に黙って処理を行うのは良くない行為です。

情報開示はとっても大切。

でも、きちんと説明することが前提なら、処理は宝石をより美しく見せるための工程にすぎないですよね。

 

良くないのは、

  • 処理について何も伝えず、まるで天然そのままのように語る行為
  • 「天然未処理宝石」の看板を付けて、低品質なものをまるで高品質であるかのように見せかける行為

宝石に詳しくない人を欺くことが、良くないのです。

 

逆に一般の人が注意するべきなのは、「天然未処理宝石」という言葉を神格化しないこと。

処理を絶対悪と決めつけないことです。

そして、宝石というのは基本的には何らかの処理がされている、と知っておくことです。

 

未処理の高品質宝石は「すっぴんで美しい人間」

 

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今回の記事にあるヒスイに対する技術も、いずれ宝石に応用される日が来ると思います。

もしかすると、既に世界のどこかで行っている会社があるかも。

 

でも、それは宝石にお化粧をすることと同じです。

化粧をして美しくなれるなら、私は化粧してもいいと思います。(詐欺メイクまで行くと、首を傾げますが)

あなたは朝起きて顔も洗わずに、ドレスコード付きの豪華なレストランで食事ができますか?

天然未処理宝石で高品質なものとは、それが出来る人の事です。

 

私は、コンビニに行くにも化粧をしたい派です。

化粧をしても良いじゃないですか。

 

新しい技術。

私は歓迎だと思います。

この記事を読んで、そんなことを思いました。

 

 

 

 

 

さてそろそろ写真を撮らないとなぁ。