今日このような記事を見つけました。
文字もスケスケ透明ヒスイ 作った教授「これほど愛されていたとは」
淡く半透明の色合いが美しい宝石ヒスイ(翡翠)。超高圧をかけることで、文字が透けて読めるほどの「透明ヒスイ」を作り出すことに愛媛大学などの研究チームが成功した。
- 「朝日新聞デジタル」より引用
記事の内容をものすごく簡単に言うと、
- ヒスイという宝石は通常、半透明や不透明
- 今まで「ヒスイにすっごく高い圧力を加えると、透明になるのでは?」と推測されていた
- 愛媛大学で実際に研究したら成功したよ!
- 今後はもっともっと透明にするのが目標です
私は朝日新聞デジタルに登録していないので、無料で読める場所しか読んでいません。
なので、「記事内容」と言っても、出だしの部分だけだと思います。
興味がある方は是非全文ご覧ください。
それにしても凄いですよね。技術って。
宝石の大部分は工業用に用いるものなので、こういった「透明ヒスイ」もそのうちいろいろな分野で活躍するのでしょうね。
でもこういう記事が上がると、必ず出てくる話題があります。
ジュエリーなどで用いる「宝石」の分野でも、応用できるんじゃない?
- 宝石に利用できる技術
- 処理した宝石=合成石ではない
- 処理されて価値を改変されたヒスイが出回る!?
- 「天然未処理宝石=高価」という間違った価値観
- 処理することは悪いことですか?
- 未処理の高品質宝石は「すっぴんで美しい人間」
宝石に利用できる技術
私はそこまで技術に聡くないので、確実なことは言い切れません。
でも、おそらくこの技術は、宝石ヒスイにも利用できるのでしょう。
ヒスイという宝石については、以前1冊の本を紹介しました。
ここでも紹介したように、ヒスイは「緑色の半透明石」です。
中でも最高品質と言われているのは、「ロウカン」と呼ばれる「濃い緑色で透明度の高い」もの。
つまり、透明度が高い=ハイランクなヒスイ。
だから今回の技術が利用できれば、より価値の低いヒスイを処理することで、更に高価なヒスイに変化させることが出来る。
かもしれない。
人工的に、ヒスイの価値を上げられるということです。
ただし、経費が合えばの話ですけれど。
高圧処理というのは、当然ながら経費がかかりますからね。
経費と利益のバランスがとれないと、やる意味はないのかなぁと思います。
処理した宝石=合成石ではない
ところで、一つ注意しておきたいことがあります。
宝石学において、「処理=合成」ではありません。
全然違うので、是非覚えておいてください。
合成というのは、宝石の生成を人の手で行ったもの。
処理というのは、(天然・人工に関わらず)既に存在している宝石に対して、何か手を加える行為。
だから処理には、天然石の処理もあれば、合成石の処理もあります。
「処理した宝石=合成石」は、完全に間違いです。
また逆に、「合成石=処理が行われている」も間違い。
処理をしていない合成があっても、おかしくはないでしょう?
今回のヒスイの技術は、「処理」の話。
処理する対象は、天然でも合成でもどっちでも良いんです。
たまに誤認されている方がいるので、一応の注意書きです。
処理されて価値を改変されたヒスイが出回る!?
では、本題に戻ります。
この記事を見ると、このような不安を覚える方もいるかもしれません。
ヒスイの価値を上げることが出来る処理方法が出来たら、不当に価値を改変された(=意図的に高値になった)ヒスイが出回るのでは?
その不安は、もう今更言っても遅い話題です。
そもそも、既にヒスイには様々な処理が存在しています。
というか、ほとんどの宝石には処理が存在します。
もっと言ってしまえば、宝石は基本的に処理がされているものです。
処理せずに出回っている宝石の方が、ずっと少ないです。
今更ヒスイの処理が1つ2つ増えても、仕事が増えるのは鑑別機関ぐらい?
もちろん、販売者も注意が必要ですね。
宝石の処理なんて、もう100年以上前から行われていることです。
そもそも、なぜ処理が不当だと思うのでしょうか?
処理って、してはいけない行為なのですか?
「天然未処理宝石=高価」という間違った価値観
処理の是非を問う前に、処理をしていない宝石に対する間違った価値観について、知っておく必要があります。
よく「天然未処理宝石は高価な宝石」という考えている人がいます。
ハッキリ言えば、天然未処理は必ず高価である訳じゃありません。
本当に高価な天然未処理宝石とは、「処理する必要がない程に、高品質で産出した宝石」のことです。
宝石の中には、低品質でも処理せずに流通しているものがあります。
例えば「処理前の粗い感じが美しい」と感じる場合。これは個人の好みや美意識の話になります。
ジュエリーで言うところの高品質とは、価値観そのものが異なるので、比べようもありません。
または、処理する意味がない宝石の場合。
処理をすれば、何でもかんでも高品質に変わるわけじゃないです。
また処理をするということは、その分経費が掛かるということ。
経費をかけた分以上に、価値が上がらないなら、処理なんてする意味がありません。
つまり、天然未処理宝石は3つの種類に分かれるということです。
- 処理が不要なくらい高品質な宝石
- 低品質でも自然に産出したそのままの姿で売り出す宝石
- 処理しても仕方がない宝石
これらが、「天然未処理宝石」の看板を付けられて流通するんです。
だから、ね。
全て一括りに「高価」とは言えないでしょう?
処理することは悪いことですか?
天然未処理宝石が、必ず高品質・高価格であるとは言えないのに、なぜ処理石よりも上にみられるのか。
その理由は、「処理=悪い行為」と捉えられているからではないでしょうか。
だからこそ、「処理をしていない=良い宝石=高価」という図式が成り立つと思うのです。
でも現実はそうじゃない。
高品質でも処理する場合もあるし、高品質だから処理しない場合もある。
低品質だから処理する場合もあるし、低品質でも処理しない場合もある。
天然未処理宝石=高品質と言えない以上は、天然未処理宝石=高価とも言えませんよね。
それに「処理」は工程であって、良い悪いの範囲の外にある行為です。
だって、宝石はルースになった段階で、「カット」という「人為的処理」をされていますよ?(通常、宝石のカットを処理とは呼びませんが)
一切の処理がなされていない、天然そのままの宝石だけが「良い宝石」「正しい宝石」なら、原石以外は全部「悪い宝石」になってしまいます。
もちろん、消費者に黙って処理を行うのは良くない行為です。
情報開示はとっても大切。
でも、きちんと説明することが前提なら、処理は宝石をより美しく見せるための工程にすぎないですよね。
良くないのは、
- 処理について何も伝えず、まるで天然そのままのように語る行為
- 「天然未処理宝石」の看板を付けて、低品質なものをまるで高品質であるかのように見せかける行為
宝石に詳しくない人を欺くことが、良くないのです。
逆に一般の人が注意するべきなのは、「天然未処理宝石」という言葉を神格化しないこと。
処理を絶対悪と決めつけないことです。
そして、宝石というのは基本的には何らかの処理がされている、と知っておくことです。
未処理の高品質宝石は「すっぴんで美しい人間」
今回の記事にあるヒスイに対する技術も、いずれ宝石に応用される日が来ると思います。
もしかすると、既に世界のどこかで行っている会社があるかも。
でも、それは宝石にお化粧をすることと同じです。
化粧をして美しくなれるなら、私は化粧してもいいと思います。(詐欺メイクまで行くと、首を傾げますが)
あなたは朝起きて顔も洗わずに、ドレスコード付きの豪華なレストランで食事ができますか?
天然未処理宝石で高品質なものとは、それが出来る人の事です。
私は、コンビニに行くにも化粧をしたい派です。
化粧をしても良いじゃないですか。
新しい技術。
私は歓迎だと思います。
この記事を読んで、そんなことを思いました。
さてそろそろ写真を撮らないとなぁ。