【刻印の世界】
この話題では、打刻された刻印ばかりに目を向けていました。
でも、実際どのような機械で刻印が打刻されているのか、ご存じの方は少ないです。
そこで今回は、私の手元にあるリング用打刻機の一つを紹介したいと思います。
紹介する機械はとても古いものであり、少し面倒な打刻機でもあります。
扱いが下手だと、リングを傷つけてしまうことも。
そのためこの機械は、余程のことがない限り仕事では使用ません。
自分の持ち物に文字彫りする時だけ、引っ張り出して来ます。
そんなあまり日の目を見ない機械ですが、この機械で彫った文字はとてもよい味を出しています。
古い機械だからこそ出せる特別な刻印、その魅力に迫っていきましょう。
株式会社ハープ製 ハープグラフベビー
厳つい道具ですが、これがリング用刻印機「ハープグラフベビー」です。
私が幼いころからある機械ですので、相当の年代物ですね。
ちなみに、こちらの刻印機には後継機があり、現在でも購入可能です。
ただし、こちらの製造元の株式会社ハープ様は卸売りのため、一般の方が直接購入することはできません。
全国の彫金道具などを取り扱うお店で、購入が可能なようです。
文字彫り①リングをセットする
では早速、指輪の刻印をしていきましょう。
今回使用したのは、私が学生の頃に購入したシルバーリング。
真っ黒に変色しているので、打刻練習用に使用しています。
リングをセットした状態です。
3つの「N」の内側に、リングが見えますか?
3点でしっかりと固定しています。
指輪をセットすると、小さな尖った針のような部品が、指輪の内側に来る仕組みになっています。
赤丸の部分です。
この部品が、実際に刻印を行う針部分になります。
なおこの部品は、小さく見えても貴金属に刻印が出来る程の硬さがあります。
だから、下手にリングと針を接触させてはいけません。
簡単に指輪が傷つきます!
文字彫り②いざ文字彫り!
リングをセットしたら、次は下部のレバーを操作します。
一番下の円盤には、様々な文字が彫られています。
この円盤に刻まれた文字と同じ形の文字が、リングに打刻されます。
文字彫りの仕組みは簡単。
赤丸の箇所にあるペンのような部分が、先ほどのリング内側にセットした小さな針と連動しています。
なので、ペン部分で円盤の溝をなぞると、リング側の小さな針も同じ動きをし、文字彫りが可能となります。
文字彫りを行う際に大切なのは、一気になぞること。
ためらったり、引き返したりするのは厳禁!
貴金属は、あなたが思うよりもずっと簡単に傷が付きます。
ましてやこの機械は、文字を彫るための道具。
躊躇してしまうと、無関係な部分を傷つけたり、文字が歪んだりします。
思い切りよく、覚悟を決めて文字を彫りましょう。
手彫り感のある温かい文字彫りが出来る
今回紹介したハープグラフベビーで彫った刻印は、「手書き文字」のように見えます。
下手な人が彫ると、読みづらくなることもあるんです。
ですがこの手書き感こそが、ハープグラフベビー最大の魅力。
ジュエリーに、手作りの温かみが生まれます。
最近は刻印の方法も多様化し、レーザー刻印という打刻の手段もあります。
レーザーでの刻印は、まるで印刷したかのようなきっちりした仕上がりで、刻印された文字もとても読みやすいです。
でも、少しくらい癖がある方が、温かみがあると思いませんか?
読みづらく、癖がある。
裏返せば、確かに人の手を感じる仕上がりだということです。
きっちりした刻印文字も、悪くはありません。
ただ、時には人の気配を感じる「手書き文字風刻印」も、一興ですよね。