ジュエリーに打刻されている刻印で、最もよく見かけるのは金属の種類を打刻したものです。
プラチナなのか、金なのか、それともメッキのジュエリーか。
これらの貴金属刻印の見分け方については、先日ご紹介いたしました。
この貴金属などに関する刻印以外に、よく目にする刻印があります。
それは、ジュエリーに使用されている宝石の質量(=石目)を表す刻印。
今回は数字の羅列にしか見えない石目の刻印について、紹介していきます。
宝石の重さに関する基本
宝石がセッティングされているジュエリーでは、多くの場合、宝石の質量が刻印されています。
この宝石の質量のことを石目(いしめ)と呼び、一部の宝石を除いて、ct(キャラット)という単位で表現されます。
- 1ct=0.2g
昔、まだ重さを測る技術が発達していなかった頃、宝石の取引は「キャロブ豆」(イナゴマメ)という豆を使用して行われていました。
そのキャロブ豆1粒の重さが、約0.2g。
そのため、後世になって1ctは0.2gと定められたのです。
ちなみに。
「キャラット」と「カラット」。
これは単に英語をカタカナ表記にした際の差なので、どっちでも正解です。
ただ、カラットだと金の純度を示す「K」(=karat)と混同するので、私はct=キャラットと呼んでいます。
……K18の「K」って、「きん」の頭文字じゃなくて、「karat」の頭文字なんですよ。
ほとんど全ての宝石がctの単位を使用する
宝石は、基本的にctという単位を使用します。
ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、トルマリンやオパール。どの宝石も「ct」です。
中でもダイヤモンドの場合は、小数点第三位までの表示が基本。
つまり、0.001ct=0.0002gまで測っているんですよ。
他の宝石も、大体は小数点第二位もしくは第三位まで表示されます。
いずれにせよ、細かい世界の話ですね。
真珠・サンゴは単位が異なる
「ほとんどの宝石」に含まれないものの代表が、真珠。
こちらの単位は世界共通で、「匁」(もんめ)。ちなみに英語表記は「momme」(momと略します)
もちろん日本語の、あの「匁」ですよ。
日本固有の単位が世界基準になったのは、真珠の主な産地が日本であることに関係しています。
養殖真珠は、多くの人が知るように、日本の発明品。つまり、日本で生まれた宝石です。
そのため、真珠の加工技術に関しても、日本が世界最高峰と言われています。
今でも世界の真珠の約7割が、まずは神戸に運ばれ加工・選別し、そこから再び世界中に流通していくという流れがあるほど。
ほとんどの真珠が日本を介する取引だから、重さの単位も日本の単位が採用されているんです。
またサンゴも、匁表記をする宝石の一つ。
高知県土佐沖では、サンゴの最高品質と言われる「血赤サンゴ」が採れます。
高品質な日本産サンゴの価値を高めるためにも、質量表記は日本の単位「匁」を採用しているようです。
ちなみに、匁をグラムに換算すると、
- 1匁=3.75g
また真珠は重い宝石なので、取引の場では匁の上の単位である「貫」も使用します。
- 1貫=1000匁=3750g
ctの世界ではありえない程の重さですね。
でも、真珠の養殖や入札の場では、普通に使用される単位なんですよ。
刻印されているのはctの重さ
ジュエリーに打刻されている数字の羅列、それは多くの場合使用されている宝石の石目です。(匁が打刻されることは、まずありません)
またほとんどの場合「ct」が省略されているので、数字だけが並んでいるように見えます。
この写真の下部分、「0.01」と「0.80」という刻印がありますよね。
どちらもダイヤモンドの石目で、ctが省略されています。
このペンダントには「27」と打刻されています。
スペースが小さいので「0.」という部分まで省略されていますが、「0.27ct」の略ですね。
刻印で2~3桁の数字が並んでいれば、使われている宝石の重さと考えて良いです。
小数点が入っていれば、確実に石目の刻印です。
「メインの宝石の石目」と「周囲に入っている宝石の石目」は別に打刻する
一石の宝石のみで出来ているジュエリーの場合、石目の刻印は1つだけです。
ところが多くのジュエリーは、複数の宝石が入っていますよね。
そんな場合は、メインとなる宝石の石目と、それ以外の宝石(脇石と言います)の石目は、別々に刻印します。
また、脇石は個々の石目ではなく、総重量で表記をするのが一般的です。
ただし、総重量にしてよいのは、同じ種類の宝石のみ。
周囲に沢山の種類の脇石が入っているジュエリーの場合は、それぞれの宝石の総重量を個別に打刻しなくてはいけません。
また、たとえ同じ種類の宝石であっても、メインとなる石と脇石は別々に打刻するのが基本です。
たとえば、メインの宝石がダイヤモンドのジュエリーの場合、
- 脇石がにダイヤモンドのみ=メインと脇石の石目を別に打刻する
- 脇石がダイヤモンドとルビー=メインの刻印、ダイヤ・ルビーそれぞれの総重量の刻印、計3つを打刻する
ただし、打刻スペースの問題もあるので、メインとなる宝石の刻印しかないジュエリーもあります。
ややこしいですよね。
親切なジュエリーは宝石の種類も打刻されている
複数種類の宝石を使用したジュエリーの場合、石目だけを打刻すると、どの宝石の石目であるのか分かりにくいです。
そんな時は宝石名を一緒に打刻して、どちらの数字がどの宝石を指しているのかを明確にしています。
このジュエリーには、質量表記の前に「R」「D」の文字が打刻されています。
Rはルビーのことを、Dはダイヤモンドのことを指しています。
こちらのジュエリーは、エメラルドの周りをダイヤモンドが囲んでいるデザイン。
刻印は「E0.678」と「0.705」の2つが、打刻されていました。
両者の重さが近いので、区別するためにもエメラルドのEを打刻していますね。
これら宝石の種類を表す刻印は、天然石にしか使用してはいけません。
つまり、写真のジュエリーのように「R」「D」「E」と刻印されていれば、そのジュエリーは天然の宝石が使用されている、という意味も持っているのです。
ただし、制作者側が打刻に関するルールに従っていた場合は、ですけどね。
どんな世界にだって騙そうとする人はいるし、ルールに疎い人だっているんです。残念ですが。
石目の刻印を見れば使われている宝石の情報が分かる
消えかけている、D1.00の刻印
石目の刻印と一言に言っても、様々なルールがあります。
- 単位はctであるが、ほとんどの場合数字だけが刻印されている。(0.80ct → 0.80)
- 打刻スペースの都合で、数字部分まで省略されることもある。(0.27ct → 27)
- メインとなる宝石と脇石は、(たとえ同じ種類の宝石でも)別々に打刻する。脇石は基本的に総重量で表す。
- 脇石が複数種類ある場合は、石の種類ごとに個別表記する。
- 宝石の名前を示す文字が打刻されている場合もある。
- 宝石名を打刻する場合は、天然石でないといけない。
色々と決まりはありますが、基本的に3桁程度の数字刻印があれば、それは石目を表していると考えて良いです。
手元のジュエリーの石目刻印を見て、あなたのジュエリーの宝石質量を調べてみましょう。